2010年の結成以降、幾度ものメンバー変遷を経て2020年4月からファイナルシーズン(第6期)を迎えた禁断の多数決。
高円寺で「スナック禁断」をやっていたり、オンラインサイト「オフィス禁断」ではオリジナルソング作曲チケットを売っていたり。でも、何故かまだオンラインライヴはやっていないという線引き。
常によく分からないけど、時代の最先端を走ってきた禁断の多数決の今をどう考えればいいのか。
グループの中心人物・ほうのきかずなり氏にインタビュー。彼の考えるファイナルシーズンとこれからの展望とは?
文:ヨコザワカイト
「みんなが禁断の多数決」
―ちょうど一年前、第5期始動の渋谷WWW『禁断のライブショー』を見に行きました。あれは希望溢れる公演でしたね。
ほうのきかずなり(以下、ほうのき):こんな1年になると思ってましたか? あのライヴは“これから”と思えた夜だったんですが。
―あの時は、2020年をどういう年にしようと思っていたのでしょう?
ほうのき:あの日、「みんなが禁断の多数決だ」って言ったんですよ。まだそのやり方も分かってなくて、いずれそうしていきたいなと思っていました。実はその先に大きなライブも決まっていたんですけど、できずにファイナルシーズンとして再出発することになり…
―その決断はかなり早かったですね。
ほうのき:最初は1ヶ月で収束すると言っていたじゃないですか。でも僕はその時点で「年単位での話になるんじゃないか」と予感していて。オリンピックもできないんじゃないかと。『AKIRA』が好きだったというのもあるかもだけど。なので、すぐにメンバーには「これは長引くからライブもできなくなっちゃうかもしれない」と伝えて。一度白紙に戻すことにしました。
―どうしてファイナルシーズンなのでしょうか?
ほうのき:僕めっちゃ映画が好きで、映画みたいな人生を送りたいんです。なので禁断の多数決も映画みたいな物語にしたい。今が「ファイナルシーズン」って言っているのも、これで終わらせるつもりはないんですけど、そういうことですね。その次は、シン・禁断の多数決かな(笑)。
―第6期だからというのもあるのでしょうか?
ほうのき:そうですね、海外ドラマも好きなので。僕が好きなドラマってだいたいシーズン6くらいで終わるんですよ。それもありますね。でも、ファイナルがあと20年続いてもいいんですけどね(笑)。
「クリエイターとしてのこだわり」
―でも、珍しいですよね。「みんなが禁断の多数決だ」と言い切って、募集を広く受け付けているグループはなかなかいないですし。
ほうのき:本当に誰がいてもいいんです。ただ、俺は俺でクリエイターとしてのこだわりがあって。妥協したくない部分っていうのはあります。
―誰でも入れると言っても、1人1人に役割があるはずですよね。
ほうのき:まさに、それです。何をしたらいいのか分からなくて連絡をくれる子もいるんですけどね。
―そういう場合、ほうのきさんはどう対応しているんですか?
ほうのき:今はまずは「いいよ」って言っていますね(笑)。ただこれは初期のメンバーの頃からそうなんですけど、生の歌声は絶対に訊くようにしていて。
―それは何故でしょう?
ほうのき:歌声って一番素直に性格が出るなと思っているので、単純に聴くのが好きなんですよ。
―ちなみに今把握しているグループの人数ってどれくらいですか?
ほうのき:40人近いですね。これ何になるんだろう(笑)。応援してくれている人も含めて。
―40人は全員ステージに立ちたい人なんですか?
ほうのき:今まではそうでしたけど、この先そうでもなくなってくると思います。
―「役割」が重要だと。
ほうのき:そうですね。
―メンバー全員で集まったりはしないということでしょうか?
ほうのき:仲良しサークルを作りたい訳では全くないので、全員で集まるというのは無いと思います。その時その時に集まれる人が集まるみたいな感じですかね。
―みんなが一番気になっているのって、禁断の多数決を経て有名になっていった女の子ってたくさんいるじゃないですか。ほうのきさんってどう発掘してるんだろうって。
ほうのき:ボブリシャスはニコ生で見つけたんですけど、他の子から紹介を受けてとかもあるし、本当に「縁」ですね。僕、運命をマジで信じてるんで。これよく驚かれるんですけれど、可愛い子いないかなってSNS探したりしたことないですもん。
―そうなんですか!
ほうのき:ほげちゃんは、Instagramで人の“いいね”を見れると知って、初めて誰かのを見たときに、めっちゃ元気よく歌ってる子が目に入って、その時丁度「元気良い子が欲しい」と思っていたので、その瞬間にDMしたらすぐに返ってきて決まったんです。全員、そんな出会いがあって。
―今は色々な人から声がかかってくる訳じゃないですか。正直、大変じゃないですか?
ほうのき:ファイナルシーズンに関しては、全部受け入れているので逆に大変じゃないですね。でも偶然の出会いがあれば、こちらからいきますね。それは変わらずです。
オンラインライヴをやらない訳
―何が起こるかわからないワクワクの裏にはそんな出会いがあるんですね。これは今年になって訊きたかったのですが、何故オンラインライヴをやらないのでしょうか? 禁断の多数決と親和性がいいようにも見えるのですが。
ほうのき:サカナクションのオンラインライヴとchelmicoのライヴを見て、それがめっちゃ良かったんですよ。でも2つともめっちゃお金かかってるんですよね。お金かかってないオンラインライヴってどうしてもしょぼくて、僕個人としては見るに耐えないというか。アイデア次第でどうにかなるかも知れないんですが、僕が思いつくオンラインライヴのアイデアってお金かかるものばかりで。
ほうのき:よく「ライブ最高でした」とか。「人生一良かったです」とか言われて。お客さんとして見たことないので、そうなの!? と(笑)。
―いや、最高ですよ!
ほうのき:これは謙遜でもなく分からないんですよね。大体ベロベロに酔ってるし、一斗缶叩いてたりするし。
―ちなみに、あの一斗缶はどこで手に入れてるんですか?
ほうのき:あれは東急ハンズですね(笑)。
―そうなんですね(笑)。でも何だろう、禁断の多数決って「お祭り」に見えるんですよね。見ると、特別な日になるというか。
ほうのき:確かに、お祭りは好きですね。ハプニングも好きなので、そこは大事にしていますね。
―最近はオンラインサイト「OFFICE禁断」で色々なチケットを売っていますよね。
ほうのき:あれやばいっすよね(笑)。でも簡単な話で、オンラインサロンとかクラウドファンディングとかって正直夢があるんですけど、今みんなやってて。みんなと同じことやるの好きじゃないんだよなあ、と。だから、BASEで何でも売れるならこれ面白いじゃんと思って始めました。

▶︎OFFICE禁断:https://www.officekindan.jp/
―今売っているのは…?
ほうのき:作曲チケットとかファンクラブのチケットもありますし、一番やばいのは「ギャラ飲みチケット」ですね。まだ売れてないので、是非(笑)。
―あれはどう使えばいいのでしょう。
ほうのき:交通費と飲み代さえ出れば、どこでも行きますよ。沖縄のファンが結託して呼んでくれないかなあ(笑)。
―それは熱いですね!
ほうのき:交流が好きで、人と喋るのが好きなので。いろんなところに行きたいですね。
―その裏にはシリアスな話、ライヴができない分お金の面が厳しいというのもあるのではないでしょうか。ファンも心配な部分かもしれません。
ほうのき:それは正直あります。それはうちだけじゃなくて、みんなそうですよね。トライアンドエラーで、何でもやってみるしかないです。
―スナックも営業されています。あれはどんなきっかけだったんですか?
ほうのき:あれは、前に〈スナック禁断〉というイベントをあの場所で2回くらいやったことがあって。そこから時間は空いて今になって「何かイベントやれないかなあ」と思っていたときにちょうどスナックのママから3,4年ぶりに電話がかかってきて。「実は今レンタルスペースとしてお貸ししていて」と。ちょうどそんなことを思っていたので、すぐにやりますと返事をして。それも運命ですね。
「クリーミーという濁った情景」
―運命ですね。ほうのきさんの感受性とでも言いますか。
ほうのき:だいたい、LINE来たらみる前に誰から来たかわかる(笑)。そういう話がめっちゃあるんですよ。
―禁断の多数決もそんな運命に形作られていると。
ほうのき:BASEでの出会いも運命だと思っているので、是非買ってくださいね! 特にギャラ飲みね(笑)!
―でも、制作チケットもいいですよね。あれを買ってアーティスト活動を始めたり、アイドルを始めたりしてもいいと思います。
ほうのき:やり方次第ではかなりいいんじゃないかな。あとこういう使い方して欲しいなというのがあって。あるカップルがいたとして、彼女が禁断の多数決を好きだとするじゃないですか。それで彼氏がプレゼントとしてオリジナルの曲をプレゼントすると。サビで彼女の名前を禁断の人が歌ってる、みたいな(笑)。
―それめっちゃいいですね。あと最後に訊きたかったのは、先日発表された新曲「One More Night」に「クリーミーな虚い」という歌詞が出てきて。元々、僕が禁断の多数決を知った曲が「透明感」だったんです。それで、昔は「透明」だったものが今は「クリーミー」になっていったんだなと。
ほうのき:その通りです。それと深い赤っていうウイルス的な色もプラスしていて、でもクリーミーという濁った情景にしているんです。コロナ渦以降に初めて書いた曲です。
「クリーミーで虚ろいな背景設定」プレイリスト MADE BY ほうのきかずなり(禁断の多数決)
―ライヴでも見たいですね。
ほうのき:やりたいですね。公衆衛生のルールを考えて、でも禁断のライヴってみんな騒ぐしなあと。僕基本は野蛮に行きたい人間なんですけど、ギリギリ国のルールは守りたいので。そういえば、僕今年一回もライヴ行ってないんですよ。
―お客さんのリテラシー次第ですよね。あとは、事前にどれだけ主催者とお客さんでコミュニケーションを取れるのかがかなり大事になってくると思います。
ほうのき:コミュニケーション大事ですね。
―2020年も終わって、来年以降はどう見えてるんですか?
ほうのき:「トゥナイト、トゥナイト」と「透明感」っていう曲が人気なんですけど、ああいうノリの良い曲を最近作ってなかったんです。実はコロナ渦でそっち系統の曲が一曲できて。今歌詞を作っています。僕の中ではBTS以降のというか、ノレる曲ができました。これでまた禁断の多数決いいなって思ってくれる人が増えると嬉しいです。あとは、物件を絶賛探し中です。
―物件ですか。それはネット上じゃない方がいいんですね。
ほうのき:直接会いたいんですよ。今後は、常に流動的に人が出入りして、いろんなアイデアが集まってすぐに実現できる「アジト」が作れたらいいな。
禁断の多数決 ウェブショップ「オフィス禁断」: https://www.officekindan.jp/
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ほうのきかずなり Twitter:@honoki_